私の好きな漫画「るきさん」

私にはこれから先もずっと大切に持っていたい漫画があります。それはちくま文庫から出ている「るきさん」です。作者は高野文子さん。126ページほどの薄い文庫本の漫画です。るきさんはオールカラーページで、ひとつのお話が見開き2ページでまとめられています。オールカラーと言っても使われてる色数は4~5色程度なのですが、味のあるイラストをそのカラーがより魅力的に見せています。

そして「るきさん」のストーリーについて。「るきさん」は独身一人暮らしの女性で、在宅で医者の保険の請求のお仕事をしています。るきさんは加算機が得意で、1か月の仕事を1週間で終わらせて(この辺りは時代を感じますね)あとは穏やかに日々を過ごしています。図書館に通って本を借りて眠る前に読書して。毎日ご飯を作って食べて、趣味は切手集め。そして親友のえっちゃん(こちらも独身女性だけれど、彼女はキャリアウーマン)とお買い物に行ったり、お互いの家でお茶を飲んだり…。そうなんです、とりたてて大きなドラマも恋愛話も出てこない漫画なんです。るきさんの淡々とした日常が描かれただけの漫画なのですが、大人になった今、定期的に開いて読みたくなる漫画なのです。それは大抵自分の心が落ち着かないときや、焦って忙しくしている時。るきさんのマイペースだけれども、丁寧な日々の暮らしに惹かれるのかもしれません。誰かのペースに乱されることもなく、仕事をしたり、図書館に行ったり、買い物をしたり、切手を集めたり、親友とお茶したり。独身のひとりぐらしだけれども、そこには全く悲観的な感じはありません。親友のえっちゃんともべたべたし過ぎない自立した大人の距離感。しかしそこに冷たい感じはなく、むしろ2人のやりとりが面白くてあったかい。まさに理想の友人関係です。漫画のラスト、るきさんは突飛な行動に出るのですが(笑)

この漫画が描かれたのは、おそらく日本がバブルの頃かなと思われます。好景気で大量消費が世間では当たり前のギラギラしたバブル時代に、こんな素朴な漫画が描かれたことが正直驚きです。この作品の作者やこの作品を支持した読者のように、「なんかこんな生活はおかしい」と疑問を抱いていた人たち(?)はきっと当時は少数派だったでしょう。でも不況の続く明るいニュースの少ない現在の日本なら、この漫画の価値観に共感される方は大勢いらっしゃると思います。華やかではないけれど、日々の暮らしを丁寧に過ごしたいと思われている方には、ぜひおススメの漫画です。